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ジャンル・やかた 10


「私がまず思ったのは、挑戦期間ですー。
 普通は数週間なのに、兄は数ヶ月生きていられましたよねー?
 まあ、最後は自爆ですがー。」
いつものアッシュなら、ここで笑うとこなのだが
真面目な顔で続けるので、ローズも無言で聞き入った。

「つまり今までの挑戦者は、武闘派だったのでしょうー。
 館中を探して回るというストレートな方法ばかりだった。
 だけど兄が探していたのは、主の部屋じゃなくて
 主の部屋に繋がる手掛かりだったんじゃないんですかー?」

ローズが口を挟んだ。
「いや、あたしは何も聞かされてないんだよ。
 上からもグレーからも。
 あたしの知ってる事は、本当に少ないんだ。」
「あなたが嘘を付いていないのはわかりますー。
 あなたが知っていて言えないのは、館の間取りだけですよねー?」
「うん、大体そんなもんだ。」

ローズはちょっと驚いた。
真剣にバカだバカだと思っていたアッシュが
こっちの状況を読んでいる事が信じられないのだ。
それほど心の底からアッシュをバカだと信じていたのである。

「ローズさん、私が知りたいのは、電気の流れなんですー。」
「はあ? 電気・・・?」
ああ、やっぱりバカだ、とローズはガックリきた。

「はい。 電気ですー。
 この館って、古いようでいて凄い電子制御がされていますよねー。
 私の今いるこの建物のこの階の廊下だけで、カメラが6個ー。
 7階建ての多分地下2階、それが8棟ー!
 全体の電気の使用量は、ものすごいもののはずですー。」

「ちょっと待った、地下が何で2階なんだい?」
「これはあまり自信がない推理なんですけどー
 敷地内は電気や電話線は、地下ケーブルで通ってないですかー?
 だったら外部からの電気の入り口は、地下ですよねー?
 警備や設備の搬入とかを考えて、よくわからないですけどー
 とにかく地下1階に電気系統の制御室がある、と考えたんですー。」
真偽はともかくも推理が出来る頭はあるんだ、とローズは再び驚いた。

「そして、こういう作りの建物には、必ず地下水路が通ってますー。
 今まで観た映画ではそうでしたもんー。
 歴史やら地盤やらはわからないですけどー
 何となく、地下はあっても2階までじゃないかとー。 勘ですがー。
 そんで水路と同じ階に、ビリビリくる電気系統は持って来たくないんでー
 ここは元々地下2階に水路があってー、地下1階は牢屋とか拷問室とかでー
 そこを電気関係の部屋として利用するんじゃないかとー。」
ローズもそこまでは知らないのだが
アッシュの言ってる事が正しいような気がして、ほおー、と声を漏らした。

へっ、本気を出せばこんぐらい軽いぜ! と、アッシュは図に乗った。
「主の部屋がどこかはわかりませんがー
 この監視カメラの数からいっても、かなり多くのモニターがあるわけで
 モニター室がどこかにあると思うんですー。
 私が主なら、しょっちゅうそのモニターを見ていたいので
 主の部屋の近くにモニター室もあるんじゃないかと考えたんですー。
 私は電気には詳しくないですけど
 最初に館に電気が入ってくる場所があって
 そこから各階に電気を流しているのだから
 その場所にはどこにどれだけ電気を流しているか、表示があって
 ケタ外れに電気消費量の多い部屋、そこがモニター室だろう
 そこを見つければ主の部屋も近い、と、考えてるわけですー。
 だから地下に行きたいんですー。」

「・・・あんた、凄いね・・・。」
よくわからないが、あまりの意外性にローズがつぶやいた。
「私の電気の知識は、某専門誌の受け売りですけどねー。」
アッシュが天狗になって、表面だけの謙遜をする。

「でもさ、地下には入れないんだよ。
 それはルール違反になるんで、即刻失格になるよ。」
「へえ、そうなんですかー。
 うーん、・・・・・・・ そうかあー
 そのルールだけで地下の価値がわかったから、もう良いですー。」
あ、なるほど、とローズは思った。

「じゃあ、どうするんだい?」
「私も無謀な特攻はしたくないので、的を絞りたいんですー。
 兄の行ってた先を教えてくれませんかー?」
「あー・・・、悪いんだけどそれは言えない。」

アッシュが食い下がる。
「上か下か、北か南かだけでもーーーーーっ!」
「失格になりたいのかい? 即刻死刑だよ?」
「うーーーーーーーーーー・・・・・・・」

頭を抱えるアッシュに、なだめるようにローズが語りかけた。
「あたしだって困ってるんだよ。
 あんたは主の座を望んで来たわけじゃない。
 言ってみれば、無欲な被害者であって、本当に気の毒に思うんだよ。
 でもあんたは来ちゃっただろ。
 始まっちゃったんだから、終わらせるしかない。
 できればあんたに代替わりを成し遂げてもらいたいんだよ。」
「・・・・・本当ですかー?」
「今は本当にそう思っているよ。」

「ありがとうございますー、ローズさんー。 嬉しいですー。
 あなたのためにも頑張りますー。」
「グレーのためじゃないんかい?」
「あんなバカ兄貴の事はどうでもいいですよーっ
 そもそもあいつがこの惨事の元凶ですもんー。」

そりゃそうだね、とローズも心の底でうなずいた。
「じゃ、まだ出掛けないんだね。 用事が出来たら声を掛けな。」
部屋を出ようとするローズに、アッシュが訊いた。
「ローズさん、あなたはこの館内で引越しした事がありますかー?」

「一度だけだったかね。 何でそんな事を聞くんだい?」
「居住区はここだけじゃないんでしょー?
 他の居住区でも私は安全でいられますかー?」
「さあね。 だけど居住区内だけは安全なんだよ。」
「そうですかー、ありがとうー。」

「?」
首をひねりながら、ローズは出て行った。

引越しはない、という事は
ローズさんの部屋があるから、私もこの部屋なんだよね
だったら他のフロアにも挑戦者専用部屋ってのがあるかも?

そんで? いや、ただそんだけ・・・。
自分が推理している事が、あまり役に立たないと気付いて
さっきまでの天狗気分が、一気に冷めてしまったアッシュだった。

何か忘れてる気がする・・・

アッシュは詰まる度に、繰り返しこの言葉を思い
それはもう、一種の呪文のようになっていた。

続く。

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