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イキテレラ 9


婚礼が決まり、再び泣き暮らすイキテレラの元に王妃がやってきた。
「イキテレラ、あなた、王子が嫌いなのかしら?」
王妃は優しくイキテレラの髪を撫ぜる。
 
「王子は我が子ながら、たくましく立派な青年で
 多くの女性たちから恋される、理想的な男性ですのに
 あの子のどこが不満なのかしら?」
 
イキテレラは、オドオドしながら答えた。
「王妃さま、王子さまに不満など・・・。
 ただ・・・、わたくしは・・・、男性が恐いのです・・・。」
 
「まあ!」
おっほっほ と、王妃は高らかに笑った。
 
「お可愛いらしいお方。
 心配する事はなくてよ。
 王子も今はあなたにご執心だけど
 あのような美丈夫、誘惑は多い。
 すぐに次の女性へと気を移しますわ。
 正妃の仕事は、世継ぎを産みさえすれば終わり。
 後は好きに暮らせるのよ。」
 
王妃はにっこりと微笑み、イキテレラの頬を撫ぜた。
「少しの間だけ、辛抱なさいね。」
 
 
イキテレラはその言葉を頼りに、耐える決心をした。
何もこの男性は、自分を取って喰おうとしているわけではないのだ。
家を継いでも、どんな男性が婿入りするかわからない。
どうせいずれは、結婚はせねばならない運命なのである。
 
にしても、相手があの人とは、あんまりだわ・・・。
イキテレラは遠くから王子の後姿を盗み見て、改めてショックを受けた。
 
大抵の女性なら喜ぶ、広くたくましい背中は
イキテレラにとっては、恐怖の対象でしかない。
せめてもう少し華奢な人だったら、まだ良かったのに・・・
 
イキテレラは元々、ここまでの男性恐怖症ではなかった。
舞踏会での強引さ、しつこい貼り紙、そして突然の拉致
経験した事のない、それらの非現実的な出来事での恐怖が
すべて王子由来だと刷り込まれてしまったのだ。
 
 
婚礼の儀は、イキテレラには苦行だった。
常に隣に怪物がいる気分であった。
 
パレードの時には、無理に笑顔を作って手を振ってはいたが
王子に握られている片手は、震えて汗をかいていた。
 
王子はそれを行事への緊張だと勘違いし
イキテレラの頬にキスをし、ささやいた。
「私のか弱い姫、今日からは私があなたを守ると誓おう。」
 
 
王子の顔が近付いた時に、一瞬だけイキテレラの表情がこわばったが
何とか平静を保ってやり過ごした。
この嫌悪感を、誰にも気付かれてはならない。
 
その瞬間に、多分人生が終わるから。
 
 
 続く
 
 
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コメント:3

椿 10-06-02 (水) 23:04

全く先の読めない展開で良い意味で緊張しながら読みました。
前回コメントさせて頂いた件ですが、文の造りだったりテンポ良く読める楽しさを一括りで「面白い」と表現しました(^^;)
そして今回はまた違った面白さでした!
こんなに続きが気になるパロディ小説は読んだ事がありません。

のん 10-06-03 (木) 0:24

先が楽しみでなりません

あしゅ 10-06-03 (木) 14:07

椿、ありがとう。
なるほど、そういう意味の面白いだったか。

今回はもっとテンポ良くいくぞ。
理由は、ハーレクインに挫折したからだ。
恋愛、他の題材で挑戦する。
(諦めてないんか!)

のん、いつもありがとうー。
予告とどんどんズレてて、ほんと申し訳ないよ。

もう、これはこれでやっといて
恋愛は他の以下略

うーん、“恋愛” と限定するからダメなんかな。
“エロ” で入って、愛だ恋だはどうかな。
でも、純愛・甘甘チュッチュの世界を
書いてみたいんだよなあ。

てか、何でこんな野望を持っちゃったんかなあ。
ちょっと、そっから自問自答してみるわ。

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